触れるミュージックビデオ!? インライン動画再生のはなし

HTMLファイ部ののびーです。12月ぶりです。 さて今回は、以前にとあるアイドルさんのWebサイトを制作した際に使った、 インライン動画再生 という技術について、その仕組みや使い所を解説していこうと思います。

今回のために作ったデモサイトがこちらになります。ぜひこちらのページもスマホで開きつつ、記事をご覧ください。

https://fnobi.github.io/plays-inline-demo/demo/

インライン動画再生とは

動画を再生するWebサイトを作ったことがある方ならわかると思いますが、これまでiOS Safariでは、動画を再生する際は必ず全画面再生になってしまう、という制約がありました。

この制約により、たとえば動画をサイトの背景に使ったり、動画と連動する演出を出したりといった表現が、iOSのシェア率を考えると断念せざる終えない…という状況が続いていました。

ところが、昨年リリースされたiOS10からこの制約が解除され、iOSでも全画面にならない動画再生、つまり インライン動画再生 が使えるようになったのです!

たかが動画の再生方法が変わるだけじゃないかと侮るなかれ、これによってWebサイトにおける表現の可能性がぐっと広がるのではないかと、僕は考えています。

playsInline属性

さてこのインライン動画再生ですが、iOS10においても、ただ動画を埋め込むだけでは機能しません。HTML5のvideo要素に、特別な属性をつけて使うことが必要です。

<video src="動画のURL" playsinline />

この playsinline が、「この動画はインラインで再生したい」という印になっています。

なお当然というべきか、iOS9以前およびSafari以外の一部のアプリのWebViewでは、この playsinline をつけても、全画面での再生になってしまいます。 表示しているブラウザが playsinline に対応しているかどうかは、video要素がplaysInlineプロパティを持っているかどうかで判別できます。(大文字小文字に注意)

var videoDom = document.querySelector('video');
var isAvailable = 'playsInline' in videoDom;
if (!isAvailable) {
    alert('非対応です!!!!');
}

またiOS以外の端末(PC・Android)では、以前からインラインでの動画再生が可能です。のでまとめると、以下のような関数を用意しておくと便利でしょう。

function isAvailableInlinePlay () {
    const ua = navigator.userAgent;
    const isIOS = /iphone|ipad|ipod/i.test(ua);
    return (!isIOS || 'playsInline' in videoDom);
}

canvasと組み合わせて「触れる動画」に

こうして、インラインで動画を再生できるようにしたものが、冒頭にも貼ったデモです。

https://fnobi.github.io/plays-inline-demo/demo/

f:id:nobiii:20170301112642p:plain

iOS10の端末で開いても、自動で動画が再生され、左側に再生・停止のUIが表示できているはずです。(iOS9以下の端末では、非対応の旨を表示して動画をけします)

しかし、ただサイト上で動画再生ができるというだけでは、あまりありがたみを感じないかもしれません。 せっかくですので今回は、こちらを拡張して、iOSでも遊べる 「触れる動画」 をいくつか作ってみます。

まずはこのデモを、video要素そのままで再生するのではなく、 video要素をcanvas要素に描画して表示する形に修正 してみます。

繰り返しになりますが、インライン動画再生を使えば、動画が全画面にならず、サイト上のUIや機能と共存できるので、canvas要素を使ったグラフィックとも同時に使えますし、canvas要素はそもそもにvideo要素をそのまま描画することに対応しています。

var canvasDom = document.querySelector('canvas');
var ctx = canvasDom.getContext('2d');
ctx.drawImage(videoDom, 0, 0); // 動画の、現在のフレームをcanvasに描画

こちらを使って、video要素で再生している動画を、そのままリアルタイムにcanvasへ描画したのが、こちらのデモです。(見た目上はほとんど変わらないかも)

https://fnobi.github.io/plays-inline-demo/demo/?use-canvas=true

f:id:nobiii:20170301112706p:plain

canvas要素への描画までできてしまえば、あとはアイデア次第でかなり色々な表現ができると思います。いくつか思いつきを実装してみたので、おたのしみください。

ズラせる動画

https://fnobi.github.io/plays-inline-demo/demo/?filter=scroll

f:id:nobiii:20170301112713p:plain

動画を触ると、動画をスクロールできます。動画は無限に並んでいるので、どこまで行っても動画があります。

曇りガラス越しに見る動画

https://fnobi.github.io/plays-inline-demo/demo/?filter=glas

f:id:nobiii:20170301112716p:plain

ロード時は動画全体が曇ってると思いますが、指で触るとその部分はクリアに見えます。 丁度サンプルで使っている動画が、車から見た風景になっているので、雨の日の車窓のような雰囲気ですね。

傾く動画

https://fnobi.github.io/plays-inline-demo/demo/?filter=tilt

f:id:nobiii:20170301112720p:plain

端末を傾けると動画自体も傾きます。どんな姿勢で見てもちょうどいい角度で見れる動画!!!というのもできるかも。

まとめ

いかがでしたか?スマホのタッチで操作するUIに、動画を掛け合わせるだけでも、いろいろな表現が考えられると思います。 今回の案件も、「ミュージックビデオ」としてWebサイトをつくるという構造になっていましたが、こうした試みも今後増えてくるかもしれません。

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